2012年5月15日火曜日

休日支援(森岡ホーム)

森岡ホームは女性4人が暮らされているホームです。
 土日は、隔月に実家に帰省される方が2名、ホームで過ごされる方が2名です。

 この日の昼間、2名の方が移動支援を使って、半田のコロナと、
健康の森のめぐみの湯にそれぞれ行かれました。

 そしていつもは帰省されるAさんが、ご実家の都合で
昼間ホームを利用されることとなり、スタッフと一緒に、
当日大府の大倉公園で開催されていたつつじ祭りに行くことになりました。

 Aさんは自閉症傾向のある女性です。
 なんとなくひらがなや絵は理解されているようなので、
この日のスケジュールを簡単に紙に書いて説明。
 Aさんは最初から「ジュースを買いたい」と繰り返し発言されていたので、
公園に着いたらまずジュースを買うことをスケジュールに書きました。

 お昼に何を食べるかの相談で、「ドーナツが食べたい」
というリクエストがあり、お祭りを見た後にドーナツを食べる、と紙に記入。
 「コーヒーが飲みたい」と言われるので、ドーナツの後に
「コーヒーをのむ」も書きました。

「でんしゃにのる」→「おまつりにいく」→「ジュースをかう」
 →「どうぶつをみる」(移動動物園がきていた)→「ドーナツをたべる」
 →「コーヒーをのむ」


 Aさん一応納得されたのですが、興味の焦点は
“ジュース”と、“ドーナツ”に絞られ、
「ジュース買う?」「ドーナツ食べる?」という発言を
何度も繰り返されていました。

 出発して駅に向かう途中の自動販売機で立ち止まり、
「ジュース」と立ち止まるAさんでしたが、
あえてスタッフが取り合わないでいると、
あきらめて後を追いかけてこられました。
 パニックになったり、固まってしまったりせず、
ある一定の我慢がOK。


 公園に到着し、すぐに露店のジュースコーナーを発見したAさんは
突進してジュースをわしづかみに。
 どれを選ぶでもなく、まず目に付いたものを取る、
という様子でした。しかし、その場では飲まずにカバンの中に。

 その後、「パンを食べたい」と、またパンのあるところを発見して
目に付いた最初のパンを握り締め「食べる、食べる」と連呼。
 静かな場所を探して腰を下ろし、
そこでパンを食べ、ジュースを飲みました。

 さてパンを食べ終えるや否や、「ドーナツは?ドーナツ食べたい」と
連呼しだしたAさん。本当はもうすこしお祭りを見る予定でしたが、
その場の刺激が多すぎたことと、目的のドーナツの要求がかなり強いことを考えて
予定を変更してドーナツを食べることに。

 ドーナツ店では食べる楽しみよりむしろ、“ドーナツを食べる”という
目的達成のために口に入れている、という感じを受けましたが…
とにかく無事、お昼を食べ終えました。


 ドーナツ店を出た後、次に「お茶飲みたい」の要求が始まりました。

 ドーナツ店では飲み物でコーラを飲んだばかりだった
(コーヒーのはずがコーラに変わっていた)ので、
「お茶はなしね」と言葉で伝えましたが、「やだ」「飲みたい!」を連呼されます。
しばらくどうしようか考えてから、
「ホームに戻ったら、コーヒーを飲みましょう」と伝えました。

 するとAさんコロッと発言が変わり、以後、「お茶飲みたい」の要求はなくなり、
「ホームでコーヒー飲みます」「コーヒー入れてね」を繰り返しだされました。
 その後Aさんは、一応スケジュールで書いた移動動物園も見に行くことができ、
帰宅途中は「コーヒー入れてね」という確認のみで帰途につかれました。



 ホームの支援と違い、外出の支援はその場その場で
臨機応変に、すぐに判断をする場面がたくさん出てきます。
 今回の場合、いつ、何をするのかを、わかる言葉で説明して、
なんとか伝わったのでOKだったのだと思います。

 Aさんは、“食べ物にばかり目が行ってしまって大変”
という評価をついしがちですが、それは特性としてある意味仕方のないことです。
 支援者としては、その中で、できたことに着目すると、
できることを基本に置いた、前向きな判断ができるようになります。
 Aさんの場合は、先のことがわかれば、ある一定の我慢ができる、という
素晴らしいスキルがあるので、わかる形でお伝えする工夫をすればよい、
という判断ができるかと思います。

 Aさんにとって今回の外出がどれだけ楽しみと感じられたか、
あるいは逆に、不安を感じていたかは不明ですが…
もっと不安を持たずに、内容をより楽しめるような
工夫をさせていただかなければ、と感じたお出かけ支援でした。
(奥田)

移動動物園を見るAさん